ミツバチの恋

 

遠い昔

ある小さな国の

小さな町で

赤い屋根の家の

白い垣根の

赤いバラに

一匹のミツバチが恋をした

 

そのバラは

どのほかのバラよりも

 紅く 大きく きれいで

とても甘い蜜を

 たくわえていた

 

ミツバチは

 そのバラの密を吸い

そしてまた

 友達になりたかった

ミツバチは幾度か

 バラに近づこうとした

しかしバラは

 銀色のトゲで守られていた

ミツバチには

 それを越える勇気がなかった

あわれなミツバチは

 バラを眺めているより

 しかたがなかった

 

いつしか

ミツバチにとって

 バラと別れなければ

 ならない時がやってきた

そのころになると

ミツバチは

 バラに近づこうとする

  他のハチに

   敵意を抱くようになり

 他のバラと語っている

  自分にさえも

   嫌悪を抱いた

 ミツバチにとってそのバラは

  唯一のものであり

   彼だけのもので

   あるべきであった

 そして

  ミツバチとバラ以外の

   存在は“無”であった

 銀色のトゲを除いては・・・・

銀色のトゲは

 あいかわらず

  ミツバチを苦しめた

ミツバチは

 別れる前に

 せめて一度はその密を吸いたかった

  その花粉の一つでも身につけたかった

ミツバチの祈りに

 銀色のトゲも

 次第にうすれていった

しかしそれとともに

 バラに対する

  怖れがわいてきた

はたして

 彼にとって

  彼女は

   素晴らしすぎるのでは

    なかろうか

 彼女と付き合うことは

  彼女の美しさを

   けがすことにならないだろうか

ミツバチにとって

 日々が

  二つの心が争い合う

   苦しみとなった

 考えれば考えるほど

  悩みは深くなった

 彼は進むことも

  退くことも出来なかった

ある日ふと彼は思いついた

 以前は彼の苦しみであった

  銀色のトゲを作り出すことを

これによって彼は

 もとの想いにかえった

 

もちろんそれで

 ミツバチが満足したわけではない

彼は銀色のトゲが

 薄れていくのを望んではいない

しかし彼は

 それをうち砕ける日を

  待ち望んでいるのである

 

恋を得る日を